研究者支援への思いや今後の展望についてお話を伺いました。

科学技術の持続的な
発展に貢献し、
豊かな未来へとつなぐ
公益財団法人 萩原学術振興財団
代表理事
萩原 義昭
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財団の理念である“創造と挑戦を支援する”が生まれた経緯を教えてください。
“創造と挑戦”は、萩原電気ホールディングス株式会社を創業した父、萩原忠臣から受け継いだ理念です。父も技術者でした。ラジオの修理の仕事からスタートし、徐々に幅が広がり、公共の無線の仕事まで手がけるようになりました。
小さな仕事から大きな仕事まで、新しいことに挑戦しながら作る姿勢を大事にしていました。創意工夫と新たなことへの挑戦は、技術者だけでなく研究者にも共通することだと思います。研究者は、今わからない未知を紐解き、原理を追求します。原理の追求は、創造と挑戦がなければ成し得ません。私たちは、そんな研究者の姿勢を支援したいと考えています。
理学は原理の追求を行い、工学はその応用です。平たく言うと、研究者が突き詰めて、技術者がそれを活用するということだと思います。父も僕も、新しいものを作る技術者です。研究者の追求があってこそ新たな技術が生み出せる、という認識を持っていました。 -
実際に研究者支援を始めて、発見したことはありましたか?
研究助成の募集を行ったところ、実にさまざまな分野からの応募がありました。それぞれの研究者が、ひたむきに自身の研究テーマに取り組む様子が、申請書からも読み取れました。
そこから私の中に、ある思いが芽生えたのです。異分野の研究者同士をつなげば、何か新しいものが生まれるのではないか。異分野の研究者による共同研究で思わぬ化学反応が起こり、新しいものが誕生するかも知れません。これこそが「創造と挑戦」ではなかろうか、と。 -
異分野の研究者をどのようにしてつなげるのですか?
研究助成の贈呈式の場を活用することにしました。贈呈式でそれぞれの研究テーマを発表し合うことにより、研究者同士の交流が生まれるきっかけを作りたいと考えたのです。
それぞれ得意な研究分野を持ち寄り、掛け合わせて新しいものを創り上げる。みんな違うから良いのです。異なる個性が交わるからこそ生まれる何かを楽しみにしています。 -
財団が研究者支援を行う上で大切にされていることは何ですか?
仕事も研究も、全て“人と人のつながり”が大切だと考えています。
その研究者がどう生きてきたか、成果だけでなく“人となり”にスポットを当てたいのです。
研究者は思いを持って取り組んでいます。
ただ、人となりや思いは、提出いただく書面だけでは伝わりにくいものです。 -
研究者の人となりや思いをどのようにして知るのでしょうか
私たちは、助成対象となった研究者のもとへ足を運ぶ『フォローアップ訪問』を実施しています。
助成を行った研究者を“萩原ファミリー”と捉え、訪問して近況を聞き、私たちができることはないか尋ねています。
助成して終わりではなく、気にかけ声をかけ伴走し続けたいと考えています。
研究には5年、10年かかるものも多いので、財団の助成が役に立つのなら何度でも応募してほしいと思っています。 -
研究者支援を行う中で喜びを感じる瞬間を教えてください。
研究助成の贈呈式は研究者が発表を行う場となっているのですが、この時の研究者の表情が生き生きしていて、毎回感動します。
研究の経緯や目的を発表する顔がとても楽しそうで、私も嬉しくなります。
贈呈式での研究発表は学会などと違い、専門知識のない関係者や異分野の研究者に対して行うものであるため、研究内容を噛み砕いてわかりやすく伝えてくださる点も嬉しいことです。 -
財団が目指す未来の姿をお聞かせください。
社会に役立つ成果を出すことは、私たちだけでは成し得ません。
私たちに成り代わって社会を豊かにしてくれるパートナー、それが研究者の皆さんです。
だから、研究者への支援が必要なのです。
私たちは活力ある豊かな社会の実現のために、研究者に寄り添い伴走します。
“人を支える”は財団ができること、“人がつながる”は研究者が創出すること。それが自然と、未来の豊かさを創っていくのだと考えています。研究も仕事も、自分一人では成し得ません。色々な人がマッチングして動いて初めて成果が出るのです。異なる分野に挑戦している人同士だからこそ、相乗効果が生まれます。
今までも、これからも、萩原学術振興財団は“人”に思いを寄せた活動を継続していきます。